2021.10.27
イベントレポート
FASTAR 3rd DemoDay
独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)は2021年10月27日、「アクセラレーションプログラムFASTAR 3rd DemoDay」をオンラインにて開催しました。
本イベントは、中小機構が実施するアクセラレーションプログラム「FASTAR」の第3期(2020年度一次募集)に参加した9社の企業による成果発表と、視聴者の投資家や大手企業とのマッチングを目的としたものです。
全体の流れとしては、外部審査員のインキュベイトファンド株式会社 代表パートナー 村田祐介氏、および経済産業省 新規事業創造推進室室長 石井芳明氏のお二方による特別講演の後、プログラム第3期の参加企業9社によるピッチやパネルディスカッションが実施されました。
インキュベイトファンド株式会社 村田祐介氏による特別講演「シード期のチームビルディング」では、同社の出資先スタートアップの事例を交えつつ、スタートアップがチームビルディングにおいて陥りやすい失敗パターンと、その予防のための心掛けについてレクチャーしました。
経済産業省 石井芳明氏による特別講演「オープンイノベーションによる価値創造」では、スタートアップが小さくまとまるのではなくグローバル水準のユニコーンまで成長するための環境づくりとして、政府が打ち出しているスタートアップ支援・オープンイノベーション推進施策の概観を解説しました。
続いての参加企業によるピッチでは、下記の9社が本アクセラレーションプログラムにおいて練り上げた事業計画の発表を行いました。
【医療/ヘルスケア領域】
アットドウス株式会社
代表取締役 中村秀剛氏
副作用リスクが高い抗がん剤の投与量を、ポンプ技術により微量化する注射剤を開発。投薬デバイス「アットドウス」は、投薬量を超微量に抑え、日々の生活を維持したまま長時間投与することを可能にする。新たな治療手段として、患者のライフスタイル中心の医療を目指す。
株式会社血栓トランスレーショナルリサーチラボ
代表取締役社長 神窪勇一氏
血栓症治療薬の副作用リスクを低減化し、出血リスクをより安全・確実に測定する検査薬を開発。従来の検査法とは異なり、特異的に血栓を捉える微量トロンビン産生試験(SMAT)を発明。2種類の研究用検査試薬キットの商品化を進め、今後パイプライン化やカスタムオーダーでの試薬提供サービスに拡げる。
株式会社ソラハル
代表取締役 北村健氏
年々増加する心理カウンセリングのニーズに着目した相談支援のERPソフト(withコロナのオンライン対応可)、カウンセリングのマッチングプラットフォームを提供。心理支援業務のデジタライズを進める「ソラハルClient First」で心理支援職の負担を軽減し、業務を効率化することで、すべての人がケアとサポートにアクセスしやすい社会を実現。公認心理師らによる法人向け人的資源開発(HRD)プログラムの提供を予定しており、導入やPoC協力先を募集中。
【フード領域】
株式会社八代目儀兵衛
代表取締役 橋本隆志氏
お米の目利き・ブレンド・炊飯のノウハウを駆使し、お米からご飯までのプロデュース力を生かしたサービスを提供。日本人の米離れや農業の人手不足が進むなか、日本の食文化・食事スタイルの素晴らしさを再発見してもらうため、米業界を盛り上げるためのプロデュース事業を展開。
【AI領域】
アルム株式会社
代表取締役 平山京幸氏
金属加工業界に生産性革命をもたらすNCプログラミング完全自動化AIソフトウェアを開発。多品種少量生産の中小製造業において、手間とコストがかかるNCプログラムをAIで自動作成する「ARUMCODE1」を開発することにより、製造業が抱える深刻な人手不足と生産性向上の課題解決を図る。
株式会社調和技研
代表取締役社長 中村拓哉氏
柔軟なカスタマイズ性を有するAIエンジンを開発。言語・画像・数値のAIエンジンを組み合わせたAIソリューションを提供。大学研究室発の高水準AI技術と現場にフィットしたオーダーメイドのソリューション提供によって、少子高齢化による労働人口減少や企業のDX化など日本の社会問題の解決を目指す。
ものづくり領域
株式会社ブルー・スターR&D
会長 柴野佳英氏
ものづくりにとって永遠の課題であるバリ取りを超強力・超音波で洗浄する装置を開発。精密加工や成型加工の過程で発生する残留物や付着物である「バリ」を除去する世界オンリーワンの技術を開発。今後IPOを目指し、拡販を開始する。
株式会社
東京ダイヤモンド
工具製作所
取締役社長 濱田洋右氏
半導体製造プロセスにおける課題(高性能化・超高速化・コスト削減・環境負荷)を解決する表面加工技術を開発。半導体加工において、化学反応を伴う新たな研削技術を完成させ、さらなる半導体デバイスの高性能化、加工プロセスにおける環境負荷軽減に貢献することを目指す。
アンヴァール株式会社
代表取締役社長 櫻井重利氏
海水からマグネシウムを採取し、MgとCO2の燃焼反応によりCO2固定化と水素生成をおこなうことで、低CO2金属材料生産とCO2削減、水素社会を実現(SDGs対応)。海洋に含まれるマグネシウムを製錬しマグネシウム合金の原材料とすることで、日本を資源輸出国へ導くとともに、生産過程でCO2の固定化を行い地球全体の気候変動対策にも貢献することを目指す。
さらに、参加企業9社全てが舞台へ上がってのパネルディスカッションにて、主に本アクセラレーションプログラムにおける活動や得られた成果を報告しました。
最後には各社のピッチ内容を受けての表彰式が行われ、経済産業省 石井氏、インキュベイトファンド株式会社 村田氏、そして運営事務局を務める株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎より、それぞれ下記の通り賞が贈られました。
※主催者である中小機構は、企業と共に事業計画を策定支援した立場のため、賞は設定せず
経産新規室賞:アルム株式会社
人手不足という多くの中小企業が直面する課題を解決するDXソリューションの好例であり、中でもものづくり領域は、職人の高齢化・後継者不足という深刻な問題を抱え、さらにDXの進みが遅いためニーズが非常に高い取組みである点を評価。
インキュベイトファンド賞:
株式会社八代目儀兵衛
市場として食品D2C領域は大きく成長を見せており、さらに日本の食に根付く米はD2Cとの親和性が非常に高く事業拡大のポテンシャルが高い。またそれを実現する要素として、米のサプライチェーン上のステークホルダーとの強固な関係値を有していることも他社には真似できない優位点であるとして選出。
サムライインキュベート賞:
アットドウス株式会社
日本人の2人に1人が癌になると言われている中、健康寿命を伸ばしたいという願いから課題解決に真摯に取り組んでいる点を高く評価。癌になった際に当人も家族も負担の大きい投薬治療の副作用の問題を認識し、当事者だった立場から熱心に対応されている姿に感銘を受け本賞へ選出。