EVENT

2022.11.08

イベントレポート

FASTAR 5th DemoDay

※こちらの動画は、「アクセラレーションプログラムFASTAR 5th DEMODAY」のダイジェスト版となります。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)は2022年11月8日、「アクセラレーションプログラムFASTAR 5th DEMODAY」を現地会場並びにオンライン配信によるハイブリッド形式にて開催しました。

本イベントは、中小機構が実施するアクセラレーションプログラム「FASTAR」の第5期(2021年度一次募集)に参加した9社の企業による成果発表と、現地参加並びにオンライン視聴の投資関係者や大手企業とのマッチングを目的としたものです。

1年間のプログラムを経て、資金調達・事業提携・リクルーティングなど様々な想いを持って各社がピッチイベントに登壇し、事業会社をはじめ、投資関係者や大手企業等、多くの方に参加・視聴いただきました。

冒頭では、主催者の独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部部長 坂本英輔氏、後援者の経済産業省中小企業庁 経営支援部 課長補佐 宮本祐輔氏より開会の挨拶が行われました。

独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 部長 坂本英輔氏
独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部
部長 坂本英輔氏
経済産業省中小企業庁 経営支援部 課長補佐 宮本祐輔氏
経済産業省中小企業庁 経営支援部
課長補佐 宮本祐輔氏

続いて、株式会社エルシオ、HILO株式会社、リードファーマ株式会社、株式会社シルクルネッサンス、モビリティエナジーサーキュレーション株式会社、株式会社フレンドマイクローブ、BugsWell株式会社、株式会社アーキロイド、株式会社フィッシュパスの9社が本アクセラレーションプログラムにおいて練り上げた事業計画の発表を行いました。

【ヘルスケア】

株式会社エルシオ
代表取締役社長 李蕣里氏

※オンライン登壇

株式会社エルシオ 代表取締役社長 李蕣里氏
株式会社エルシオ 代表取締役社長 李蕣里氏

ヘルスケアの領域に属するエルシオは「見たいもの」を「見える」ようにするスタートアップ。液晶で作ったレンズとAIの組み合わせで、広い視野、薄型、度数可変(オートフォーカス)機能を備える新たなアイウェア=エルシオグラスを開発しています。まずはこの技術を用いて老眼などで困っている方の視生活をサポートします。さらにこの度数可変眼鏡技術をXRスマートグラスに応用することで、XRスマートグラス特有の酔いを解消。2027年までにスマホに代わる「XRモバイルグラス」を流通させたいと考えています。

【バイオ】

HILO株式会社
代表取締役 天野麻穂氏
HILO株式会社 代表取締役 天野麻穂氏
HILO株式会社 代表取締役 天野麻穂氏

国民の2人に1人ががんになる時代。現在がん治療の主流は特定の細胞を狙い撃ちできる「分子標的薬」に移りつつあります。しかし分子標的薬の課題は、患者ごとに効き目も副作用もさまざまということ。今はどの薬がフィットするかわからないまま投薬しているという状況です。しかしHILOが北海道大学と共同開発中の光診断薬を用いれば、どの薬が患者に効くか、生きた細胞1細胞レベルで治療開始前に判定できるようになります。この光診断薬を用いてすべてのがん患者のQOL向上に貢献していきます。

【バイオ】

リードファーマ株式会社
代表取締役社長 和田郁人氏
リードファーマ株式会社 代表取締役社長 和田郁人氏
リードファーマ株式会社 代表取締役社長 和田郁人氏

国立循環器病研究センター発のベンチャー企業第1号。心疾患、脳血管疾患、認知症、がん、心筋梗塞、脳梗塞……など現在循環器疾患の患者は増加しています。その主な原因の一つは脂質異常。これまでの薬で治療が困難な脂質異常の患者も多く存在しますが、昨今はDNAやRNAといった遺伝子情報を司る核酸を利用した「核酸医薬」の登場で治療の光が見えてきました。しかし核酸医薬は毒性を発現する可能性があります。リードファーマが開発した「BROTHERS核酸」は低毒性を実現し、核酸医薬の普及を後押しします。

【バイオ】

株式会社シルクルネッサンス
代表取締役 伊東昌章氏
株式会社シルクルネッサンス 代表取締役 伊東昌章氏
株式会社シルクルネッサンス 代表取締役 伊東昌章氏

会社のミッションは「カイコを利用したタンパク質合成技術で世界を変える」。シルクルネッサンスは世界で初めてカイコを用いた無細胞タンパク質合成系の実用化に成功しました。これはカイコから抽出した液を用いて試験管で目的タンパク質を合成するという革新的なもの。しかもそのタンパク質は可溶性で、短時間での効率的な合成が可能です。現在タンパク質医薬品の受託生産マーケットは拡大中。来年中には病気に関連するタンパク質を試薬として製造・販売する事業を開始し、将来は再生医療分野への進出も考えています。

【エネルギー】

モビリティエナジーサーキュレーション株式会社
代表取締役 前薗真司氏
モビリティエナジーサーキュレーション株式会社 代表取締役 前薗真司氏
モビリティエナジーサーキュレーション株式会社 代表取締役 前薗真司氏

現在のトラックはエンジンが生むエネルギーの30%が冷却水から、さらに30%が排気からと合計60%が捨てられている状態です。MECはそうした排熱を再利用することで燃費の向上やCO2の削減に貢献します。ここで用いるのは沸点の低い媒体を加熱・沸騰させてその蒸気でタービンを回す「バイナリー発電」。これまで大型のものしかなかった中、MECは超小型で低価格なバイナリー発電機を開発しました。車両搭載を行い、コンビニ配送トラックの15~25%燃費削減にも成功。未利用熱を再生し、膨大なエネルギーを生み出します。

【微生物ビジネス】

株式会社フレンドマイクローブ
代表取締役 蟹江純一氏
株式会社フレンドマイクローブ 代表取締役 蟹江純一氏
株式会社フレンドマイクローブ 代表取締役 蟹江純一氏

社名通り「微生物と友達に」を合言葉にした名古屋大学発ベンチャー。これまで食品系工場で発生する油脂は「加圧浮上分離法」で物理的に分離させて捨てるしかできませんでした。しかし油脂由来の産業廃棄物は廃棄に費用がかかる上、悪臭も発生。そこでフレンドマイクローブは油脂を分解する微生物を開発して特許も取得。その微生物は分解速度が他社の10倍と高性能を誇ります。現在は微生物を効果的に活かす装置を食品関連工場に販売。将来的にはバイオディーゼルや生分解性プラスチックなどへの転用も視野に入れています。

【昆虫食】

BugsWell株式会社
代表取締役 浪方勇希氏
BugsWell株式会社 代表取締役 浪方勇希氏
BugsWell株式会社 代表取締役 浪方勇希氏

会社のビジョンは「昆虫が持つ可能性をイノベートしてエシカルで栄養価の高い商品を世の中に普及させる」。将来的な食糧不足に備えて国連が昆虫食を推奨したのが2013年。BugsWellは昆虫食の中でも生産効率が高く、栄養価も豊富なコオロギに着目。乾燥コオロギパウダーやコオロギオイルなど、試作も含めて15種類の商品を完成させました。今後は医療、ヘルス&ビューティー、飼料、肥料など昆虫の可能性を開拓。さらに宇宙ステーション内で自給自足することで長期宇宙生活における食の課題解決にも貢献していきます。

【VR】

株式会社アーキロイド
代表取締役 佐々木雅宏氏
株式会社アーキロイド 代表取締役 佐々木雅宏氏
株式会社アーキロイド 代表取締役 佐々木雅宏氏

アーキロイドが開発した「archiroid.com」はオープンソース型注文住宅設計プラットフォーム。現在の注文住宅は集客と設計の面で問題を抱えています。コロナ禍での住宅展示場離れ、設計者不足、高性能義務化による設計の難易度アップ……そんな中、archiroid.comは土地の広さや部屋数、価格などで検索が可能。設計DXで構造計算も行い、作った設計はすぐにVRで確認できる仕組みです。今後は建築家が創るような質の高い住宅を持続可能なものにすると共に、ハウスメーカーに匹敵する量を提供していきたいと思います。

【ITサービス】

株式会社フィッシュパス
代表取締役社長 西村成弘氏
株式会社フィッシュパス 代表取締役社長 西村成弘氏
株式会社フィッシュパス 代表取締役社長 西村成弘氏

漁協や釣り人にとって便利な機能を搭載したアプリ「フィッシュパス」を開発。現在250漁協団体、1,021販売店と提携し、338,760人が使用しています。事業の発端は地元河川の衰退を感じたこと。これまで河川は漁協が管理していましたが、人材不足と主な収入源である遊漁券の販売店不足から悪循環に陥っていました。しかしフィッシュパスの導入によって遊漁券の購入が簡単になり、GPSを使うことで釣り人の監視業務も効率化。釣り人の集積データが取れることで、放流や環境保全計画も立てられるようになりました。

各社のプレゼンテーションでは審査員として、株式会社みらい創造機構 取締役/共同経営者の金子大介氏、リアルテックホールディングス株式会社 取締役社長の藤井昭剛ヴィルヘルム氏、三菱UFJキャピタル株式会社 上席執行役員ライフサイエンス部長の長谷川宏之氏、株式会社サムライインキュベート 代表取締役の榊原健太郎氏の4名が参加、各社に対して今後の更なる展開やマネタイズの手法など鋭い質問とコメントを寄せました。

左上:三菱UFJキャピタル株式会社 長谷川宏之氏
右上:リアルテックホールディングス株式会社 藤井昭剛ヴィルヘルム氏
左下:株式会社みらい創造機構 金子大介氏
右下:株式会社サムライインキュベート 榊原健太郎氏

イベント最後には、各社のプレゼンテーションの発表を受け、4名の審査員より以下のとおり賞が贈られました。また受賞者は副賞として1on1による事業相談権を獲得しました。

※主催者である中小機構は、企業と共に事業計画を策定支援した立場のため、賞は設定しておりません。

みらい創造機構賞:
株式会社フレンドマイクローブ

みらい創造機構賞:株式会社フレンドマイクローブ
みらい創造機構賞:
株式会社フレンドマイクローブ

みらい創造機構賞に輝いたのは、高性能微生物の開発で油脂由来の産業廃棄物の解消を目指す「株式会社フレンドマイクローブ」。受賞理由について「株式会社みらい創造機構」取締役/共同経営者である金子大介さんは次のように語りました。
「フレンドマイクローブさんはA-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)からはじまって今回のFASTAR、IPAS(知財アクセラレーションプログラム)と国の支援も受けながら着実に成長されています。特に環境分野は国や企業といった仲間との連携が不可欠。そこも含めてやっておられる部分を見て応援したいと思いました。また、創業者である名古屋大学の堀教授からのバトンを蟹江社長がしっかり引き継ぎ代表をしているところにも好感を覚えました。こうした形が研究開発型ベンチャーのひとつの雛形になってほしいという想いも込めて賞をお渡しします」。
これを受けてフレンドマイクローブ代表取締役の蟹江純一さんは「これからに期待してということで、前もってこの賞をいただいたと思っています。これからも期待に応えられるよう、皆様の力をお借りして成長していきたいです」と抱負を述べました。

リアルテックホールディングス賞:
BugsWell株式会社

リアルテックホールディングス賞:BugsWell株式会社
リアルテックホールディングス賞:
BugsWell株式会社

リアルテックホールディングス賞を受賞したのは、コオロギを用いた昆虫食の可能性を模索する「BugsWell株式会社」。登壇した「リアルテックホールディングス株式会社」取締役社長である藤井昭剛ヴィルヘルムさんは以下のようにコメントされました。
「人類の重要課題となっている“たんぱく質危機”に取り組んでいることはもちろん、浪方社長の“多惑星化”まで考えるクレイジーさに惹かれました。こういう社長が成功する姿が見たいですし、日本のみならずもっともっとグローバルに出て行けるポテンシャルもあると思います。昆虫食は競合も多く海外でも多くの企業が出てきていますが、そんな中、三歩も四歩も先を見て戦略を考えているところがビジネス的にも評価が高いと感じました」。
BugsWell株式会社代表取締役の浪方勇希さんは、藤井さんから指摘された“多惑星化”について、「そこは私の個人的な想いに紐づくもので。私の父は私が3歳の頃、36歳で他界しました。そのとき思ったのは、人は必ず死ぬ、人生は一度きり、いつ死ぬかわからない――という3つの原理です。30歳になったとき改めてそれを感じ、いつ死ぬかわからない人生の中で何ができるか考えたとき、人類と地球のためにこれまでの経験を還元したいと思ったのです」と思いを述べられました。

三菱UFJキャピタル賞:
HILO株式会社

三菱UFJキャピタル賞:HILO株式会社
三菱UFJキャピタル賞:
HILO株式会社

三菱UFJキャピタル賞に選ばれたのは「HILO株式会社」。がん治療の主流になりつつある分子標的薬の精度を向上する光診断薬「Pickles」の開発を進めています。「三菱UFJキャピタル株式会社」上席執行役員ライフサイエンス部長・長谷川宏之さんは以下のようにコメントされました。
「FASTARには“より早く”というイメージがあり、大学のシーズをより早く社会実装し、医療現場や患者さんに届けるという意味でHILOがもっとも相応しいと感じました。さらにプレゼンテーションをお聞きして、FASTARでの1年間のメンタリングを受けてものすごく事業内容がブラッシュアップされた――つまりFASTARを一番活用されたのではないかと感じました」。
HILO株式会社代表取締役の天野麻穂さんはその言葉に「FASTARを受講するまでは事業計画もネットで調べてナンチャッテみたいなものしか書けなかったのですが、1年しっかりご指導いただいて『今後私は何をどういう順番でやっていくのか、それには何が必要で、いくらのお金がかかるのか』を自分の言葉で説明できるようになりました」と返答。関係者への感謝と共に「これをきっかけに一刻も早く患者さんや臨床のお医者さんにこの技術を使ってもらえるよう精進していきたい」と思いを述べられました。

株式会社サムライインキュベート賞:
株式会社アーキロイド

株式会社サムライインキュベート賞:株式会社アーキロイド
株式会社サムライインキュベート賞:
株式会社アーキロイド

最後のサムライインキュベート賞に選ばれたのは、オープンソース型注文住宅設計プラットフォーム「archiroid.com」を開発した「株式会社アーキロイド」。「株式会社サムライインキュベート」代表取締役・榊原健太郎さんは開口一番「僕は注文住宅で家を作ったのですが、そのときにこれがあったらよかった」と会場を和ませ、以下のように続けられました。
「結局私は好みの間取りや外観をセレクトできるフリーダム・アーキテクツで家を作りましたが、アーキロイドさんはその進化版だと思います。これが実現すると家づくりはもっとラクになるし、非常に期待できると感じました」。
株式会社アーキロイド代表取締役の佐々木雅宏さんはその言葉に「嬉しいことを言っていただいた」と答え、「注文住宅って買ったことのある方じゃないとわからないことがすごく多いのです。注文住宅を買った方は、みんなarchiroid.comを使いたかったと言ってくれる。家を作りたいと思っている人の大変さを一刻も早く軽減して、素敵な家を作れたらと思います」と笑顔を浮かべられました。

また、審査員を代表し、株式会社サムライインキュベートの榊原健太郎氏より、登壇企業へ熱いメッセージが贈られました。

サムライインキュベート賞:株式会社toraru
株式会社サムライインキュベート
榊原健太郎氏

「岸田(文雄)首相が『今年はスタートアップ元年だ』と発言されたように、今は大きなお金がベンチャーキャピタルに流れ込んでいます。第1期・第2期のDemoDayに参加された企業の6割が資金調達を実現して、動いたお金は総額40億円。今回は100億円を超える可能性があります。今後はユニコーンではなく、1兆、10兆、100兆の会社をみなさんと一緒に作っていきたいですし、今回それができることを確信しました」。