2024.03.28
イベントレポート
アクセラレーションプログラム FASTAR 8th DemoDay(前編)
2024年2月26日に行われた、独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催するアクセラレーションプログラム「FASTAR 8th DEMODAY」の様子をレポートします。
今回のピッチイベントには、2022年度に第8期として採択された14社のスタートアップが登壇し、プログラムを通じて練り上げられた事業計画と事業成果を発表しました。
登壇企業は下記の14社です。
株式会社FuturedMe 代表取締役CEO 宮本悦子
株式会社オキシキャリア 代表取締役 山口智宏
株式会社Cubec 代表取締役CEO 奥井伸輔
株式会社Medifellow 代表取締役 丹羽崇
株式会社SUSTAINABLEME 代表取締役 後藤友美
株式会社コノミー 取締役COO/CTO 尾島康仁
Floatmeal株式会社 代表取締役 北村もあな
KEYes株式会社 代表取締役 野寄朋彦
Lighthouse株式会社 代表取締役 針生亮汰
株式会社スライベックス 代表取締役 鶴野嵩敬
インサイトアカデミー株式会社 代表取締役 金珍燮
株式会社Dots for CEO/Founder Carlos Oba
株式会社パンタレイ 代表取締役 佐藤靖徳
株式会社アプデエナジー 代表取締役社長 王本智久
(敬称略)
開会に先立ち、主催者の独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事 平泉洋より挨拶がありました。
「今回は400名を超える多くの方に参加登録をいただきました。FASTARは、設立5年以内のスタートアップを対象に、ビジネスプランや資金調達、事業提携のための事業計画の策定、ブラッシュアップを支援するプログラムです。本日は、2022年度に採択された第8期14社が登壇します。」
続いて、本事業の後援者を代表して、経済産業省中小企業庁創業・新事業促進課 課長 伊奈友子氏から挨拶がありました。
「現在、政府を挙げてスタートアップ育成支援に取り組んでいます。特に、社会課題の解決に取り組む企業が増えているという実感があります。スタートアップの方の若い着想と斬新な発想、そしてスピード感が重要になってくると期待しております。」
また、審査員として、4名の紹介と挨拶がありました。
みやこキャピタル株式会社 取締役パートナー 三澤宏之 氏
伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 取締役パートナー 中野慎三 氏
オムロンベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 井上智子 氏
株式会社三菱UFJ銀行 成長産業支援室室長 岩野秀朗 氏
ピッチは参加企業14社が7分間ずつ実施。前半に7社、途中休憩を挟んで後半に残り7社が登壇し、それぞれのピッチ終了後に審査員の方からコメントをいただきました。
1.株式会社FuturedMe
1社目は、株式会社FuturedMe(Website ) 代表取締役CEO 宮本悦子さんです。
同社は、2018年設立の大学発ベンチャー企業で、創薬を根底から変革するCANDDY技術プラットフォームによる未来の薬作りに挑戦しています。ミッションは、「No Patients without Medicine」。薬がないことで治療を諦める患者さんがいない未来を目指しています。
ゲノム医療が進んで解析技術は進んでいても、標的となる病気原因に対して75%に薬がないという問題があります。これを解決するためにCANDDY技術を使います。低分子化合物であるCANDDY分子が標的と結合し、プロテアソームに誘導することで、標的は分解されます。これにより原理的には100%の病気に対応することができます。
また、このCANDDY技術は日本初のオリジナル技術のため、強い特許を持っており、グローバルに展開して大きな契約ディールが期待できると考えています。
審査員の井上氏から、「注目される面白い領域だが、競合と比較したデメリットはあるか?」と質問があり、「デメリットといえるかわかりませんが、プロテアソームそのものを利用する単純なものなので、分解に特化した方法になります。競合のユビキチン化ではまだ分かっていないことを逆に利用していける可能性があるかもしれません。」という回答がありました。
2.株式会社オキシキャリア
2社目は、株式会社オキシキャリア(Website ) 代表取締役 山口智宏さんです。
同社では、「人工赤血球」の開発を行なっています。
獣医療では人間のような献血システムがないため輸血用血液が不足しています。こういった動物医療の現場に「人工赤血球」を投入することで、必要な時に迅速に供給可能な状態を作り上げることを目標にしています。
具体的には、牛のヘモグロビンを脂質膜でくるんだリポソーム製剤となります。特徴としては、血球の膜を破壊するので血液型がないこと、牛ヘモグロビンを核とした本製剤を異種動物へ投与しても安全だというPOCが取れており、血液適合性も高いことです。ヘモグロビンの生成過程で滅菌操作が入るため感染源がなくなり、室温で2年間保存が可能です。将来的には、動物医療から人医療へということも視野に入れたいと考えています。
審査員の中野氏より開発技術のバックグラウンド、特許についての質問がありました。山口さんからは「もともとは早稲田大学で人用の人工赤血球として20年ほどの開発経緯があり、製造特許も早稲田大学が持っていましたが、現在は権利移転の契約を完了しています。」との回答がありました。
3.株式会社Cubec
3社目の発表は、株式会社Cubec(Website ) 代表取締役CEO 奥井伸輔さんです。
かかりつけ医に専門医レベルの判断を提供する「治療提案AI」を開発しています。
日本は高齢化に伴い、医療の供給が追いついていません。需給バランスを維持するためには、かかりつけ医が患者さんの初期接点・連携のハブとなり幅広い慢性疾患の管理を引き受けることが必要ですが、そのようなスキルを体系的に獲得する機会は限定的でギャップが生じています。
ここにAIの活用が期待されます。診療所で取れる患者さんの情報から専門医並みに判断できるAIを活用することで、かかりつけ医の薬剤調整と専門医への紹介タイミングとを最適化します。まずは緊急性の高い心不全から取り組んでいます。
かかりつけ医をAIで支援することで、どこにいるどんな患者さんでも、その人にとって最善の医療にたどり着ける社会を実現します。
審査員の井上氏より、「まだまだ医療機関のデジタル化が進んでいないが?」と質問があり、「電子カルテが導入されていない施設でも、検査結果やカルテを写真で読み取って利用できることを第一選択として考えています。」との回答がありました。
4.株式会社Medifellow
4社目は、株式会社Medifellow (Website ) 代表取締役 丹羽崇さんです。
海外日本人向け専門医「リモート診療サービス」を運営しています。
オンライン上に総合病院を作ったような体制で運営していることが強みで、厚生労働省により公示可能な33の全ての診療科を網羅しています。「世界中どこにいても大丈夫」という合言葉のもと、500人以上の専門医が24時間365日、その経験豊富な知見を患者様たちに届けている組織です。
年間18万件以上のリモート診療に対応可能な体制で運用しており、実際の相談件数も1万件以上、世界各国から心療内科や総合診療科、各診療科さまざまな利用があります。
すでに企業や国関連など、海外在住の日本人向けのサポートサービスとして利用されており、今後はターゲット企業1.9万社余りに対して適切にアプローチを行い、2028年のIPOを目指しています。
審査員の中野氏から「日本では展開しないのか?」と質問があり、「現状オンラインでできることと、できないことがあると認識している。価値の本質をしっかりと見極めながら慎重に検討・展開していきたい。」との回答がありました。
岩野氏からは、ビジネスモデルについての質問があり、「医師に対しては待機料と対応料を支払い、顧客からは定額の加入料をいただくモデルです。」との回答がありました。
5.株式会社SUSTAINABLEME
5社目は、株式会社SUSTAINABLEME 代表取締役 後藤友美さんです。
女性のものというイメージの更年期は、実は男性にもあり、2024年2月の厚労省からのレポートによると、男性更年期の経済損失は1.5兆円と試算されています。不調に気がつく機会が損失している男性更年期の課題を解決しようというのが、同社の早期リカバリー型健康経営管理クラウドシステム「Vitaly(バイタリー)」です。
アセットとしては「男性ホルモン検査キット」等を使用し、パーソナライズされたケアを提供します。これにより医療・健康関連の総コストについて1人当たり40万円の削減効果が見込めます。企業にとっては、従業員の健康情報をすべて「Vitaly」に格納することができ、作業工数を85%カットすることが可能になります。
従業員の健康管理のみならず、健康経営優良申請スケジュール管理や必須・選択項目の取得といった組織の健康経営管理システムが装備されています。10年後には900社の獲得を目指していきます。
審査員の井上氏より、「啓蒙活動が重要になってくると思うが?」との指摘があり、「従業員が手軽に検査を実施できる機会を提供するといった取り組みを考えている。」との回答がありました。
中野氏からは、「早期発見できるメカニズムは?」との質問があり、「当社独自のアセットとエビデンスに基づいたアルゴリズムによって性ホルモンとパフォーマンス力を測定します。」との回答がありました。
6.株式会社コノミー
6社目は、株式会社コノミー(Website ) 取締役COO/CTO 尾島康仁さんです。
同社は、健康的な食生活を超パーソナライズするフードテック事業を行なっています。
一言でビジョンを表現するのであれば、健康食の「Netflix(ドラマをパーソナライズ)」です。
特長の1つ目はスパイスです。漢方とも言われ、継続的に摂取することで、アンチエイジング、抗炎症作用などの効果が期待できることが科学的にも証明されています。もう一つのポイントがAIです。写真から個人の摂取した栄養価や好みを解析し、レシピをレコメンドしたり、調理工程をパーソナライズして自動生成して提供します。
代表の長岡さんは、「神の舌」を持つと評されたスパイスの専門家であり、尾島さんはITの専門家として日本マクドナルドでERP導入のトップコンサルの経験があります。両者が力を合わせて、地元石川県のためにも早く成長したいと考えています。
審査員の井上氏より、「エスビー食品との提携は素晴らしいが、全体のビジネスモデルは?」との質問があり、「主に提供しているのはホテルなどへの業務用のミールキットおよび冷凍食品。食材を仕入れて、食品の加工、製造販売というのがベースのモデルになっています。」との回答がありました。また、「画像解析は競合も多い」という指摘に対しては、「画像解析については、精度が高いことに優位性がある」との回答がありました。
7.Floatmeal株式会社
7社目は、Floatmeal株式会社 (Website ) 代表取締役 北村もあなさんです。
同社は、次世代のタンパク源「ウキクサ」の生産技術で気候変動に挑みます。
動物性タンパクの生産は環境負荷が大きく、しかも食肉などのタンパク質含有量は約20%です。一方、ウキクサは40%の含有量を誇る、栄養価の高い植物です。生産に必要な農地面積および水使用量は、他タンパク源と比較して最小限であり、環境負荷の低い食料です。さらに、短期間で大量に繁殖する特性から、たんぱく質1kg当たりの生産コストが他の農産物や食品と比べ極めて低く、技術が確立されれば低コストで大量生産が可能です。
食用として様々な用途に使うことが可能で、フレッシュはシャキシャキ食感、粉末パウダーは抹茶のような香りと、ドレッシングや餃子などの材料になります。
同社は世界で唯一、微生物を用いるなどの特殊な技術で食用のウキクサを安定して大量生産しています。
まずはフレッシュ事業を北海道で開始し、2026年からは4億円の資金によって海外生産を開始してパウダー事業も展開します。大量生産技術の検証を繰り返し4万トン規模に備えます。大量生産実現後にはカーボンクレジットの創出も行います。
審査員の中野氏より、「北海道のチェーン店「みよしの」で、ウキクサ入りの野菜餃子の販売を開始するとのことだが、食品メーカーがウキクサを使う理由は?」との質問があり、「世界の食料安全保障を守りつつ、低コストのタンパク源を提供できることが価値になると思っています。」との回答がありました。
後編へ続きます。
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