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2024.03.28

イベントレポート

アクセラレーションプログラム FASTAR 8th DemoDay(後編)

2024年2月26日に行われた、独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催するアクセラレーションプログラム「FASTAR 8th DEMODAY」の様子をレポートします。(後編)

> FASTAR 8th DEMODAY イベントレポート【前編】はこちら

ピッチは参加企業14社が7分間ずつ実施。前半に7社、途中休憩を挟んで後半に残り7社が登壇し、それぞれのピッチ終了後に審査員の方からコメントをいただきました。

8.KEYes株式会社

8社目は、KEYes株式会社(Website 代表取締役 野寄朋彦さんです。

KEYes株式会社

同社は、2018年福岡で創業、スマート南京錠を利用したtoB向けのSaaSサービスを開発・提供しています。今年で6期目となり、西部ガス、トヨタ自動車九州との実証実験を得て、2021年にサービスをローンチしました。現在までに約3億円の資金調達を行なっています。

「スマート南京錠」は、スマホアプリで解錠します。主な特長は、ログの記録(履歴管理)と、権限付与(権限管理)ができることです。製品ハードウェアは、南京錠、ワイヤーロック、キーボックスと3種類があり、これ以外にサービスの月額利用料となります。

導入事例として日本製鉄、JR九州、JR東日本、九州電力があり、各業界で利用されています。その他、想定しなかった使われ方もされており、需要が拡大しそうです。
今後は遠隔解錠できるような製品、カメラ付きの錠前などの開発に着手していきます。

審査員の中野氏より、「スマートキーは一般的に普及しているが、特許はどこで取っているのか?」という質問があり、「南京錠自体の特許はすでにあるので、南京錠を使ってのシステム特許、ビジネスモデル特許として取っています。」と回答がありました。

岩野氏からは、「屋外で使えるハードウェアの部分で強みがあるということですか?」との質問があり、「屋外で使える電気製品でもあり、他社の追随は難しいと思う。」との回答がありました。

9.Lighthouse株式会社

9社目は、Lighthouse株式会社(Website 代表取締役 針生亮汰さんです。

Lighthouse株式会社

同社は、世の中に溢れている多くの情報を整理して可視化し、これによって人の判断が最適化されるようにサポートしたいという課題意識を持っています。具体的には、DXコンサルティング事業、生成AI活用ソリューション事業の2つを運営しています。

製品としては、「FUNNEL」というシリーズ名の、ChatGPTのような生成AIの技術を活用した法人向けのソリューションがあります。企業FAQや社内規定のようなドキュメントの作成といった法人業務の自動化や、ユーザーニーズに合ったコンテンツの自動提供といった売上の向上をサポートするようなものなど、様々なユースケースがあります。

また、独自ノウハウであるデータ活用型レコメンドアルゴリズムを活かして広告制作会社と次世代型レコメンドシステムを共同開発するプロジェクトが進行しており、今後は大手小売業向けに導入展開していく予定です。

第2期は1.4億の売上となり、今年の5月には5千万円の資金調達を予定しています。その後、2026年9月期で東京グロース市場にIPO申請をしたいと考えています。

審査員の井上氏より「生成AIを活用した新しいソリューションを提供するスタートアップは多いが、市場をどう捉えているか?」との質問があり、「とにかく導入することがゴールになっているところがあるが、課題解決をゴールにしていきたい。やはり課題ドリブンであるということだと思う。」との回答がありました。

10.株式会社スライベックス

10社目は、株式会社スライベックス(Website 代表取締役 鶴野嵩敬さんです。

株式会社スライベックス

長崎で2021年5月に会社設立し、「お客さまと共にDXで繁盛を創造する」というミッションを掲げ、中小企業のDX支援を行っています。事業領域は、BPRとITを駆使した全体最適をゴールとするDXコンサルティングを主として、「kintone」のプラグイン開発も行っています。

さらに現在、運送事業のDXにも取り組んでいます。日本の運送事業は働き方改革法案を起因とする2024年問題に直面しています。運送事業会社は、ITシステム導入率が非常に低い状況にあるため、インターフェースにLINEを活用するするなどして、導入ハードルを徹底的に下げ、利益を生むことにフォーカスします。

売り上げは、DXコンサルと「kintone」をベースに、運送DXでスケールアップを目指し、6年で8倍を計画しています。2028年にIPO、売上高10億、経常利益5億円を目指しています。

審査員の中野氏より「物流業界にフォーカスしたバックグラウンドは?」との質問があり、「喫緊の課題であるということ。物流企業のあらゆる部分がアナログな状態にあり、それらを全体最適で考えていくというところに強みがあるので、着目しました。」との回答がありました。

11.インサイトアカデミー株式会社

11社目は、インサイトアカデミー株式会社(Website 代表取締役 金珍燮さんです。

インサイトアカデミー株式会社

グローバルで活躍する人材を育てるために体系的かつ網羅的な教育プログラムが必要であると考え、2019年に「海外で収益を生み出す人材育てる」というビジョンを持って創業しました。約5000名の専門家を抱え、グローバルマインド、異文化マネジメントなど130以上の講座をすでにリリース。2023年に導入企業が150社を突破しました。

メイン事業は人材育成特化型のe-ラーニングサービスです。主な受講者は大手企業の海外駐在員、海外駐在予定者、海外事業従事者です。

成長施策の1つは、現受講者向けに育成体験を強化していくこと。もう1つは、受講者層をtoCに拡大していくことです。「グローバル人材検定」を入れることによってキャリアアップしたい個人のニーズを促進し拡大していこうと考えています。

事業計画としては、BtoBの領域をオーガニック成長させ10億円、toC参入により+11億円を作り、フリーキャッシュフロー7.7億円のビジネスにしていこうと計画しています。

審査員の三澤氏より「すでに大手150社が利用しているということは、これまであまりなかったサービスなのか?」との質問があり、「キャスティングアセットと動画制作技術があり、価値観や文化的背景の理解といった部分まで網羅したe-ラーニングは、グローバル人材育成の業界でも他になかった。」との回答がありました。

12.株式会社Dots for

12社目は、株式会社Dots for(Website CEO/Founder Carlos Obaさんです。

株式会社Dots for

アフリカには500〜1000人ぐらいが暮らす電気も通信インフラもない村が数百万とあります。合わせると約50兆円の市場があると試算されていますが、それぞれが孤立しているため、その市場規模を活用できていないのが現実です。

同社の通信サービスを使えば、農村でも新しい技術、知識を手に入れたり、マーケットプレイスでスマホや農機具などを割賦にて購入したり、ビジネスを自分の村だけでなく周辺の村々にもプロモーションをすることもできるようになり、収入を上げられるようになった例も数多くあると言います。

ビジネスモデルはBtoCのサブスクリプションです。強みは、初期費用が10万円程度と非常に安価なことで、割賦販売の回収率も90%前後と高くなっています。
村と都市、村と他の国をつなぐことで、小さな村の経済をより大きな経済圏に含めることで、都市部と同等の生活水準やサービスを受けることができる世界を、2030年までに作ろうとしています。

審査員の中野氏より、「プロバイダー業と金融業を両方やっているという理解でよいですか?」との確認があり、「その通りですが、サーバーはネット接続をしておらず、ローカルサーバーイントラネットです。このサーバーと実際にインターネットのある街の間を毎日バイク便でUSBメモリにパケットを下ろして行ったり来たりすることで、1日遅れの相互通信ができる仕組みを作っています。」との回答がありました。

13.株式会社パンタレイ

13社目は、株式会社パンタレイ(Website 代表取締役 佐藤靖徳さんです。
大学発の風力発電に関するスタートアップです。

株式会社パンタレイ

風力発電は現状、洋上風車など大型に限られ、小型風車は安全性の高いものがないのが問題です。そこで同社は、円柱とリングでできた非常に新しい形をしたものを開発しました。

回転原理そのものが従来の風車とは全く異なるもので、非常にゆっくり回り、その分トルクが強く回転する時の力強さがあります。静音性があり回転数も遅いので、安全性の高い風車となります。日本を含めて世界5カ国で特許をすでに取得しています。

常用から非常用まで、独立電源としてサービスを提供していきます。これが新しい市場を形成していくと、小型風力の新しい機種として成り立つと考えています。
現在は、IoTセンサーや携帯の充電など比較的小規模の電源に対して製品開発をしており、2024年にはポータブル発電機としてクラウドファンディングを予定しています。

審査員の井上氏より「中規模発電市場を作るために、具体的に発電効率を高めるための取り組みはあるか?」との質問があり「発電率でいうと、風車自体の性能を上げていくことが必要。もう一つ重要な観点としては、風環境をどうやって改善していくか。弱い風をうまく集めて取り込むような構造体を作っています。」との回答がありました。

14.株式会社アプデエナジー

14社目は、株式会社アプデエナジー(Website 代表取締役社長 王本智久さんです。

株式会社アプデエナジー

事業概要は、蓄電池の再活用「コンバートEV」です。目標は、世界のエネルギー社会を化石燃料に依存しない社会に変えること。

エネルギーを自給自足にするためには、再生可能エネルギーを利用しオフグリッドする必要がありますが、そのためには蓄電池の利用が必要になります。ところが、蓄電池が高すぎて普及しない現状、また、ほとんどが海外に流出しているという問題があります。これらを食い止めるために日本にリユース市場を作り、蓄電池の低価格化、資源循環、脱CO2、そして脱化石燃料ができるように進めています。

同社のコアとなるのは、バッテリーをカスケードリユースするための劣化診断をする技術です。現在は、それにより、廃車E Vからバッテリーを取り出し、自動販売機を独立電源化させる装置や、家庭をオフグリッドするような蓄電池などを開発しています。

審査員の三澤氏から、「こうした技術でリユースができるようにされたバッテリーの品質保証は?」との質問があり、「リユースなので当然寿命は短くなります。弊社の場合は予知診断というものをしております。」という回答がありました。

表彰式

14社全てのピッチ終了後は表彰式が行われ、審査員によって各賞が発表されました。

みやこキャピタル賞
受賞 : 株式会社FuturedMe

みやこキャピタル賞 株式会社FuturedMe

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ賞
受賞 : 株式会社パンタレイ

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ賞 株式会社パンタレイ

オムロンベンチャーズ賞
受賞 : 株式会社Cubec

オムロンベンチャーズ賞 株式会社Cubec

三菱UFJ銀行賞
受賞 : KEYes株式会社

三菱UFJ銀行賞 KEYes株式会社

なお、副賞として受賞企業には1on1での事業相談権が与えられました。

イベントを総括して独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部審議役 石井芳明から「さまざまな分野で今の社会課題、社会のペインを解決するといったアプローチをする企業のピッチでした。ぜひ応援していただければと思います。」とのコメントがありました。

最後に、独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部部長 坂本英輔より挨拶があり、閉会しました。

閉会後には交流会が開かれ、会場に集まったVC、金融機関、事業会社、その他スタートアップにご関心ある方々とピッチ参加企業が、活発に意見交換を行いました。